【WCS2018】 ルールの特徴やメガシンカについて私見
世界大会前ですが、タイトルにあるよう今年のルールを振り返りたいと思います(とはいえ公開は世界大会終了後)。考えを整理し書き残しておくと、来年度以降のルールで新たなパーティを作るときに役立つことがありますし、久々に考察記事を投稿そして自己満足したかったので今回書こうと決めました。
WCS2018の特徴①
WCS2018は7世代版の全国ダブルにあたるものの、6世代版の全国ダブル、WCS2015とは大きく異なる点があります。それは、使用できるポケモンのプールが広いのに加え、前線で戦える要素を持ったポケモンの種類が多いため、マークすべき、メタるべき強力なパーティの種類も大変増えているということです(というよりむしろメタり切るのは難しいのかもしれません)。
その要因として、かつての6世代全国ダブル使用率トップであったガルーラが大きく弱体化されたこと、フィールドを展開する特性を持つカプが加えられたこと、そして新たな威嚇枠のガオガエンが3月頃に解禁されたことが考えられます。
ガルーラの弱体化
私が思うガルーラの(相対的な面も含めて)弱体化された要素は以下の通りです。
- 特性の親子愛による2回目の攻撃の威力低下
- 不意打ちの威力低下
- サイコフィールドや女王の威厳などの先制技を無効化する要素の追加
- グロウパンチの使用禁止(WCSルールのみ)
- 親子愛に対して反応しやすいピンチベリー*1の追加
- 新たな威嚇枠ガオガエンの追加
- メインウェポンの通りにくいメタグロスの大幅な増加
猫騙しによるサポート性能、メガシンカ前の特性である精神力や肝っ玉、親子愛による火力の高さ、半減されにくいメインウェポン、高い耐久値、積み技のグロウパンチ。これらの要素がダブルバトルにおいて “ガルーラが強い” と言われていた根拠だと私は考えています。
以上の根拠のうちの多くが弱体化したことで、様々なポケモンの活躍の機会を奪ってきたメガガルーラ及びその取り巻きとの並びが大幅に減少し、これまであまり活躍することのなかったポケモンにまで目が向けられるようになったのではないでしょうか。
読み返して感じたのですが、この説明は根拠として弱いですね。次のカプ環境の形成こそが使用されるパーティの多様化の最たる根拠だと考えます。
(ということで続きどうぞ)
カプの追加
場に出た瞬間、固有のフィールドを展開するという特性を持つカプ。「フィールド」は、その種類によって効果が異なりますが、使用する特定のタイプの技の威力を1.5倍にしたり、状態異常にかからなくしたり、地面技(地震、地均し、マグニチュードのみ)の威力を半減にしたりと、強力なものばかりです。何よりカプ自身だけでなく、地に足の付いたポケモンであれば、敵味方関係なしに効果を受ける対象になるという点が非常に大きいです。それゆえ、どのカプを選ぶか、そしてどのポケモンたちと組み合わせるかということがパーティを作る際、非常に重要な要素となりました。
また、強力な専用Z技を持つジャラランガがダブルバトルでは幅を効かせており、懸念すべきポケモンの一匹になっています。そのため、ジャラランガを簡単に倒せる、専用Z技を透かせるフェアリータイプという点からもカプは採用されがちです。
ガオガエンの解禁
ガオガエンはこれまで使用可能とされた猫騙し持ち兼威嚇枠(カポエラーとズルズキン)とは大きく異なる点があります。それは、貴重な炎タイプであること、フェアリー技が抜群で入らないこと、蜻蛉返りを覚えること、そして御三家特有の高種族値かつ高耐久であること。
上に列挙した中でも、炎タイプで猫騙しを撃つことができ、威嚇を特性に持つという、ダブルで求められる要素を圧縮し一匹の力で実現できる点が非常に魅力的です。これまでダブルバトルで使われていた炎タイプといえば、メガリザードンYやヒードラン、ウルガモス。これらのポケモンたちとは大きく異なる役割を果たせる炎タイプということを受け、高い採用率を誇っています。ダブルにおける炎タイプとは、現環境において使用率トップのメガ枠であるメタグロスや、サポート性能が高くトリックルーム対策の駒になるモロバレル、高水準の攻撃力と素早さを持ち様々な型が開発され流行しているカミツルギなどに対し、交換から含めて対応できる存在として重宝されます。
このようなガオガエン単体の優秀な能力がより使用されるポケモン、パーティの種類を増やしたと思われます。
WCS2018の特徴②
高水準な種族値や優秀な特性を持つメガシンカに加えて、一度きりとはいえ大ダメージを与えられる(変化技については触れません)Z技の使用が可能であるという点です。両者ともに強大な火力を有していることが殆どであり、読み違いなどによる攻撃の被弾がサイクルの動きを崩すことにつながりやすいです。特に行動が想定されやすいメガシンカポケモンとは異なり、Z技は不意の攻撃になりやすく、等倍ですら一撃で仕留める威力を備えたものが多いです。
各メガシンカとパーティ
今年のルールで活躍しているメガシンカポケモンについて述べたいと思います。また、今年は様々なパーティが活躍しているので、自分が思う代表的なものや注意しておきたいものを各メガシンカごとに挙げます。
パーティについてですが、6体以上のポケモンでまとめているところは、そのうちの1~2匹が人によって採用が分かれることを指しています。なおパーティの解説は省きます。
上述の通り、今年のルールはカプが蔓延りフェアリー環境と呼ばれています。そのフェアリーに対して高打点となる鋼タイプですが、中でもメタグロスは最も高い使用率を誇り、今年のルールにおける代表的なメガシンカポケモンとして取り上げられる機会も多いです。
メタグロスの特徴として、メガシンカ前の特性クリアボディが威嚇の影響を受けないこと、地に足の付いたポケモンであるためフィールドの恩恵を受けられること、使用できる技のタイプが豊富であること、高水準の攻撃力や耐久値、素早さを持つこと、そして4倍弱点を持たないことなどが挙がります。
タイプ相性的には不利であるはずのガオガエンやランドロスに対しても、広範囲な攻撃範囲と耐久の高さを活かして殴りあえます。
また環境中盤からは、AS極振り個体からHDに大きく努力値を振り分けた個体が増えました。本来ASメタグロスを上から一撃で倒せる電気Zコケコやメガゲンガーの攻撃を耐えて反撃できるようになったり、様々な攻撃を複数回耐えて相手の弱点を突き攻撃する回数を増やせるようになったりします。また、等倍のポケモンを相手取る際、1つの攻撃に大きな圧力がかけられるとは言えないメタグロスだからこそ、先手を取るより耐久性を高めて攻撃の施行回数を確保する方が好ましいです。
主なパーティ
環境トップに君臨するフェアリータイプとメガメタグロスに大きい打点を持たれるものの、種族値の高さ、威嚇、積み技の竜の舞、S操作技などダブルバトルで求められる要素をいくつも兼ね備えているメガ枠です。メタグロスで相手取るには厄介なメガリザードンYやメガゲンガーに対し、タイプ面または火力面において概ね有利な立場にあり、メタグロスの補完のメガ枠として組み込まれることも度々。
電気Zコケコやルンパッパの冷凍ビーム、スカーフテテフのムーンフォースといった、ボーマンダに上から入る高火力な特殊技の数々を耐えられるように、メタグロス同様、HDにも努力値を振り分けた個体が今ではよく見かけられます。HD基調の個体は、性格がせっかちで両刀追い風型(サポーター兼準アタッカー)や、隙を突いて竜の舞を積んだり羽休めで回復したりする型に大きく分かれます。
またそもそも積まずとも、本来の高い耐久値と攻撃性能により多くのポケモンを相手に大きく削りにいけるところも留意すべき点です。
主なパーティ
メガゲンガーの特性影踏みには相手の盤面を固定する働きがあるため、使用者側は一方的に有利を取れるような並びを作ることができます。さらにタイプと素早さの関係上、メタグロスと多くのカプに対して強いです。この影踏みとフェアリーに有利を取れるという特徴を活かした、BIG-K(ブルル、ガオガエン、ゲンガー、ジャラランガ)と呼ばれる4体の組み合わせが一時期猛威を奮いました。また、威嚇や猫騙し、後攻蜻蛉返りが可能なガオガエンと特性に防音を持つジャラランガにより、滅びの歌を採用したゲンガーも少なくないと感じました。
上述の通り、耐久に厚く振ったメタグロスが増えてきたため、ゲンガーが有利であるとは一概に言えなくなってきました。しかし、ゲンガー側も特殊・物理耐久を調整した個体が徐々に増え始め、CS極振りのものは現在殆ど見られないと思われます。
タイプ的保管に優れているIFK(ガオガエン、レヒレ、カミツルギの並び)との組み合わせが現在増えていて、この場合のメガゲンガーは凍える風を採用していることが多いです。影踏みによって素早さ関係を固定化、コントロールして味方のZ技等を上から叩き込んだり、やや苦手なメガボーマンダに対し大きなダメージを与え、かつ竜の舞による素早さ上昇分と相殺させたりするのが狙いなのではと個人的には考えています。
主なパーティ
上で述べたメタグロスに対してタイプ相性上かなり有利である上、等倍で大きなダメージが見込める全体技やS操作として強力な追い風を持っています。特性の日照りにより、本来は苦手であるはずの水タイプや雨パーティに強く出られるのも特徴の一つ。
しかし、最も使用率の高いガオガエンに対して打点が薄いどころか、相手の使う炎タイプの技の威力を高めてしまうためやや動かし辛い印象があります。また、そもそもメタグロスのパーティにバンギラスが同居することが多いため(とはいえ初期に比べると海外ではバンギ入りが減っている)、取り巻きと併せてどこまでリザードンの行動をうまく通せるか、そしてどのように選出するかなど、求められるスキルが高いと思われます。
取り巻きのメンバーとしては、ガオガエンを一撃で倒せる岩Zウツロイドや、威嚇枠かつ電気無効で相手のランドロスやコケコへのカウンターとなるランドロス、威嚇枠であるガオガエンやランドロス、ボーマンダを牽制できるウォーグルやミロカロス、グロスにリザYが強いという恩恵を受け等倍相手に髙火力を放ったりサイドチェンジを使ったりするエスパーZテテフ、そしてリザYの天敵であるバンギラスに大きな圧力を掛けるカミツルギなどが挙がります。
(既に述べたことと被りますが)確かにリザY自身は環境トップのガオガエンやコケコ、ランドロスを苦手とします。しかし取り巻きや個々の構成、そしてプレイング次第ではかなりポテンシャルの高いパーティになるのがリザY軸だと考えていますし、実際海外の大会の多くで上位に食い込んでいます。
なおリザードンはHやBに多くの努力値を振って味方の威嚇と併せて攻撃回数を増やしたりS操作をしたりする型と、CS極振り型の2系統に分かれていますが、基本的には前者が多いです。
主なパーティ
散々冒頭の部分で弱体化弱体化と述べてきましたが、猫騙しによるサポート性能、半減され辛いメインウェポン、耐久指数のおかげで、パーティを構成する一つの駒としては優秀だと思われます。しかし攻撃性能は従来と比べて大きく劣るため、飽くまでアタッカーの素質を備えた高耐久のサポーターとして自分は捉えています。味方のとんぼ返りを利用して猫騙しを撃つタイミングを調整しつつ、身代わりや積み技、S操作技を使用する起点を作るのが主な動き。
しかし、環境上位を占めるメガシンカは、私見ではありますが、メタグロス、ボーマンダ、ゲンガーの三竦みであり、それらに単体で有利を取り難いガルーラはプレイングスキルを大きく問うポケモンだと言えます。
身代わりや積み技を使用する取り巻きとしては、瞑想コケコやレヒレ、クレセリア、剣の舞カミツルギや(地面Z持ち)ランドロス、そして身代わりカミツルギやヒードランなどが主です。
主なパーティ
環境トップのメタグロス、ボーマンダ、ゲンガーからの打点が非常に大きいうえ、優秀なフェアリータイプが複数存在する今ルールでは採用が躊躇されるのでは、と始まった当初は思っていました。しかし、威嚇ガオガエンという、サーナイトを扱う上で欲しい要素(猫騙し、炎枠、ゴースト半減など)の殆どを一匹で満たすポケモンが解禁されて一気に使用率が上がりました。
サーナイトは追い風展開にも合わせられる、かつ通りの良い高火力全体技を持つトリックルーム始動要員という意味で強力です。うまくサイクルを回しながらサーナイトの行動を通し、適宜味方の攻撃と併せて相手のパーティを瓦解させていくのが基本的な動き方。グロスとリザYを除けば環境にいる殆どのポケモンに対してハイパーボイスの通りが良いのも特徴です。
しかし、メガシンカ共通の弱みである持ち物(特にピンチベリー)が持たせられないことと物理耐久の低さから、一般的なトリックルーム要員からすると脆いです。それゆえトリルについては、積極的に展開するというよりはむしろ相手のS操作への切り返しとして使用する人も多いです。
主なパーティ
一時期メガバシャーモを好んで使っていたので少し長くなります。
メタグロスが流行りに流行ったためか、「グロスを取り巻きごと上から殴って倒せば良い!」という考えに(おそらく)基づいて掘り出されたポケモン。広い攻撃範囲と火力、特性の加速が持ち味です。
かつてのバシャキザンの組み合わせが再び採用されるようになりました。キリキザンの特性負けん気により、バシャーモの物理火力を削ぐ威嚇枠を選出させ辛くし、通りの良い炎や格闘、悪、鋼の打点で攻撃します。自分の身の回りでは先発にバシャーモを起用する人と、試合終盤で削れた相手を一掃するために後発に控える人に分かれていました。
バシャーモの取り巻きとしてはキリキザンのほか、先の2体では処理に苦戦するレヒレやジャラランガなどを相手取れるコケコがよく採用されます。それゆえ地面技の一貫が激しくなったり、耐久指数の低いポケモンでまとまりやすかったり、雨パーティに脆かったりします。
またバシャーモ入りの構築の多くがその攻撃範囲の広さに頼って成り立っています。そのため、先発で投げたバシャーモが落とされると、バシャーモが本来縛っているポケモンたちに苦戦しがち。具体的にはモロバレルやヒードラン、ガオガエンなど。
ここまでの内容を踏まえると、海外の大会でよく見かけるバシャーモコータス構築に納得がいきます。バシャーモの炎技の威力を晴れ状態によって引き上げるだけでなく、バシャーモが落とされてからも強力な炎打点を用意できますし、苦手な雨パーティにも強く対抗することができます。非トリル下ではバシャーモを軸にして頭数を減らすか大きく削りを入れ、トリル起動後は眼鏡コータスと珠ツンデツンデで落としきる。この動きはシンプルながら割と強いです。(しかし択が発生しやすい構築であるため使いたくはない)
主なパーティ
猫騙しによる追い風サポートをし、次ターンで高火力の潮吹きを叩き込む動きが取れることで有名です。足が遅すぎないことからガオガエンの上をとって猫騙しを撃てます追い風を使える相方としては、環境初期ではアブリボン(特性の鱗粉や花粉団子が持ち味)が挙がりますが、現在では飛行Zカミツルギ(Z追い風によりリーフブレードが確定急所を取れる)の方が一般的です。
サブウェポンに水の波動のほか、悪の波動や冷凍ビームが採用されることが多いです。体力が削れるのに伴い火力が落ちる潮吹きとは異なり、役割対象の相手にしっかり大ダメージを与えることができます。このようにメタグロス、ボーマンダ、ゲンガー全てに対して抜群がとれること、その取り巻きに対して潮吹きの通りがかなり良いこと、大抵の場合メタグロスからの被弾ダメージ量が少ないことなども評価できます。
ただし日本人でカメツルギを使うプレイヤーは一定数いるものの、海外では殆ど見かけないので、自分はあまり意識していないメガシンカです。
主なパーティ
*1:フィラの実など、残りHPが25%以下になった時、50%回復する効果を持つ木の実のこと